Point 01
寒冷地でもゾウが快適に過ごせる、
環境負荷の少ない施設づくり
寒冷地・札幌において南国の動物であるゾウの屋内飼育環境を維持していくためには環境負荷や、ライフサイクルコストの低減が重要となる。そこで屋内放飼場では外断熱工法と逆梁トラス屋根での気積最小化などによる空調負荷低減、トップライトからの自然採光による照明負荷低減、ゾウ舎としては国内初の循環ろ過設備の採用による水道料金低減など多岐にわたる取り組みを行った。
第2章
生息地でもその数を減らしているゾウ。動物園での繁殖が難しく、輸入にも強い規制がかけられていることから、国内の動物園ではゾウが次々と姿を消している。そんな中で札幌市円山動物園は市民の声の高まりと、ミャンマー政府との交渉を経てアジアゾウ4頭(雄1頭、雌3頭)を迎え入れ、2019年3月に新たなゾウ舎をオープンさせた。目指すはゾウの生態にあった「群れ飼育」そして「繁殖」を行うことにより、アジアゾウの命を繋ぎ、次世代に伝えること。そこで大建設計は新たなゾウ舎に、寒冷地でもゾウが快適に過ごせる先進的な飼育環境を整えた。国内最大級の放飼場は、群れで歩き回りやすい行き止まりのない形状とし、餌や快適な場所を求めて歩き回るゾウ本来の習性に近い行動に繋がるような施設づくりを行った。
寒冷地・札幌において南国の動物であるゾウの屋内飼育環境を維持していくためには環境負荷や、ライフサイクルコストの低減が重要となる。そこで屋内放飼場では外断熱工法と逆梁トラス屋根での気積最小化などによる空調負荷低減、トップライトからの自然採光による照明負荷低減、ゾウ舎としては国内初の循環ろ過設備の採用による水道料金低減など多岐にわたる取り組みを行った。
飼育事故の起こりやすい動物であるゾウ。新たなゾウ舎ではゾウがいるスペースに人が入らず、専用につくられた柵越しにゾウと接し健康管理を行う準間接飼育法(ゾウをおりの柵越しに世話をする飼育法)を採用。多くの扉と仕切りを設置し、さまざまな飼育状況に柔軟に対応可能なレイアウトとした。ゾウのストレス軽減と飼育員の安全確保を両立した飼育環境を整えた。
国内の一般的なゾウ舎では頭ごとに寝室がつくられるが、ここでは寝室を設けず終日放し飼いとし、屋内で群れ飼育できる環境とした。トップライトから自然光の入る明るい空間で、砂敷きの床や水深に変化のあるプール、天井から吊るされたタイマー制御で動く餌かご、室内に温度ムラをつくるヒーターなど、ゾウの行動選択肢を増やせる仕掛けを多数つくり、ゾウの生活環境が向上するように設計した。