北京海洋館
北京動物園に隣接する、床面積約40,000㎡の大規模水族館。年間300万人を超える入館者を、リニューアルを通じて400万人に伸ばすことを目指している。大建設計は全体のうち約25,000㎡の改修基本設計を担当した。
第3章
規模を競い合う時代を終え、新たな役割が求められる水族館。生物の種によって求められる環境も設備も大きく異なる。また施設づくりのイニシャルコストも運営上のランニングコストも小さくはない。設計するには、ハードから運営手法まで、幅広く、かつ独特の知識が求められる。大建設計ではこれまでに培った知見を存分に発揮しながら複合化、映像技術の導入、リニューアル、地域活性化、海外との協力といった目の前の課題に取り組み、さらには最新技術や世界的な動向を常にキャッチアップし、あるべき水族館を模索している。
たくさんの大型水族館が各地に建てられ、規模では差別化が難しくなっている今、どのような水族館が求められるのだろう。ひとつは複合化。水族館を単独の施設として立ち上げるのではなく、さまざまな機能と融合させた複合型の施設が増えていくことが予想される。たとえばDMMかりゆし水族館(2020年)は、商業施設の中にビルトインされている。こういった規模や予算の大きくない施設をつくる上では、生物をいかに見せるかが鍵になる。
そこで注目されているのが映像技術だ。近年は低いコストで高いクオリティの映像展示が可能になっているため、さまざまな規模やシーンでの演出に取り入れやすくなっている。アクアパーク品川(2015年)では映像で季節感を出したり、水槽とタッチパネルを一体化したインタラクティブな展示などを展開した。DMMかりゆし水族館では「最新の映像表現と空間演出を駆使した新しいカタチのエンタテイメント水族館」をコンセプトに、水槽と植物と光、水生生物と植物と音、水辺と周囲の岩礁と映像など、陸上の世界から水中の世界へ展開する展示空間の中で、五感をくすぐる体験を提供することを目指している。
一方で需要が高まっているのが、高度経済成長期に建設された水族館のリニューアルだ。水族館は公共施設であることも多く、リニューアルを機に地域活性化の拠点となるべく、民間との連携による運営手法の導入、集客機能との複合、環境の保護や育成といった幅広い視点からの計画が求められる。たとえば高知県にある高知県立足摺海洋館(2020年)は高度経済成長期に生まれた施設だが、水族館本体を県が、併設の施設を国が整備するという共同体制が組まれ、国立公園に含まれるエリアにおける環境保全と地域活性化の両者に目配りした計画が求められた。大建設計は、入館者数予測を立て、規模を算定し、建設費、維持管理費、更新費などを計算して基本計画を行った。10年間の収支シミュレーションをして、入館料の検討、将来のリニューアルのためにある程度お金が残せるようなかたちでの事業収支を組み立てるなど、建物の設計から経営的な観点まで、広い視野に立って計画を組み立てた。
50年以上の水族館設計で積み重ねられた知見は、海外のプロジェクトにも生かされている。近年依頼が増えている中国の水族館の場合、規模が大きく入館者数が多いことが特色だ。たとえば北京海洋館(2021年)はリニューアルによって年間300万人を超える入館者数を年間400万人に伸ばすことを狙い、大規模な水族館を手がけてきた実績から大建設計へのオファーがあった。このときは1階を8つのゾーンからなる展示「アクアコンプレックス」、2階を飲食と物販でまとめた「マーケットゾーン」ととし、従来のワンウェイの動線ではなく、2階からの自由選択動線とすることで、水族館と商業施設を併設させた総合娯楽施設として集客力の強化を図っている。
北京動物園に隣接する、床面積約40,000㎡の大規模水族館。年間300万人を超える入館者を、リニューアルを通じて400万人に伸ばすことを目指している。大建設計は全体のうち約25,000㎡の改修基本設計を担当した。
1975年に開館した水族館。既存建物も大建設計による設計で、敷地内での建て替えにより2020年7月リニューアルオープン。国立公園内にあり、周辺の環境保全に配慮しながら計画が進められた。高知県西部の地域活性化の拠点として整備され、水族館としての飼育展示機能以外にも各種イベントや地域活動の場が設けられている。
2020年5月開業。沖縄県豊見城市の美らSUNビーチに隣接し開発される大型ショッピングセンターの中に設けられる、ビルトインタイプの水族館。「最新の映像表現と空間演出を駆使した新しいカタチのエンタテイメント水族館」をテーマとする。さまざまな海洋生物や動植物と映像・音楽を組み合わせた、五感をくすぐる体験の提供を狙う。