京急油壺マリンパーク
1968年に開園した京急油壺マリンパーク。大建設計はその中心施設である油壺水族園を設計した。東大の末広恭雄教授(初代館長)の指導を受け、当時最大の600トンのドーナツ型回遊水槽を核に、魚の能力や習性を利用して魚をショーとして見せることにチャレンジした。旧来の博物館的なイメージを覆す、娯楽性が高く家族で一日中楽しめる水族館の先駆けとなった。
大建設計が初めて水族館の設計に取り組んだのは、京浜急行電鉄の駅舎の設計を複数手がけた縁から1966年に受注した、京急油壺マリンパークだ。幅2.4m、高さ1.5m、厚さ15mmの強化合わせガラスを使用して直径13.4mの回遊水槽を実現させるなど経験のない新たな分野に挑戦し、実現に漕ぎつけた。折しも高度経済成長期、レジャーの大衆化や大型化が急速に進み、水族館ブームが起きる。大建設計は京急油壺マリンパークでの経験を活かし、旧秋田県男鹿水族館(1967年)や旧大洗水族館「海のこどもの国」(1970年)、志摩マリンランド(1970年)、串本海中公園(1971年)などを設計し、実績を重ねていった。
そして1970年代にはアクリルパネルとシーリング技術が画期的に進歩。神戸市須磨海浜水族園(1987年)ではアクリルパネルを使用して1,200tの水槽をつくり、造波装置も設けた。大型水槽で生物と生息地の環境再現を行ったことは、その後の大型水族館の展示方式への嚆矢となった。
1980年代から90年代にかけては各地のウォーターフロント開発の核として、延床面積が10,000㎡を超える大型水族館が相次いで建設された。大建設計は名古屋港水族館南館(1992年)、かごしま水族館(1997年)などを設計した。そこではゼロから水族館を創出することが求められ、建築設計以外にも入館者数の推定や収支計画、運営会社設立計画、展示計画、施設計画など多岐にわたるコンサル業務も行った。
2000年以降は高度経済成長期に建設された水族館が老朽化し、リニューアル工事や増築工事 の需要が高まった。名古屋港水族館北館の増築(2001年)や男鹿水族館GAO(2004年)、姫路市立水族館リニューアル(2011年)、新潟市水族館リニューアル(2013年)、男鹿水族館GAOひれあし’s館の増築(2013年)、アクアパーク品川リニューアル(2015年)、琵琶湖博物館・水族館リニューアル(2016年)などの設計を行った。PFI手法を取り入れ再生した宮島水族館(2011年)、PPP手法による仙台うみの社水族館(2015年)の設計など、新しい開発手法で建設された水族館にも積極的に取り組んだ。
近年は水族館の設計で蓄積してきたノウハウを動物園の設計にも応用し、水陸のさまざまな生物に対応する先進的な施設づくりに取り組んでいる。たとえば男鹿水族館GAOのホッキョクグマ舎(2004年)の設計を受け、水中生態展示を実現させたことから、札幌市円山動物園 ホッキョクグマ館(2018年)やゾウ舎(2019年)など動物園設計を受注。動物の生態をダイナミックに伝える展示を実現しながら、動物の福祉と健康を改善する「環境エンリッチメント」に取り組み、希少な動物の飼育や繁殖に取り組める環境を整えた。